早川ビーチにおいて、クロイシモチはわりと普通に見かける種である。早川以外のポイントでもだだっ広い砂地の中にポツンとある物陰や、ガイドロープと砂地の間の窪みなどに身を潜めている所を見かける。しかし、早川のように探しに行かなくても普通に見ることが出来るポイントは、そう多くはない様に思える。

 ダイビング時間帯の制限が無く、水深もそこそこ浅い早川は観察に適していると思われる。そこでクロイシモチの観察メモを始めてみることにした。

 クロイシモチをご存知ない方のためにチョットだけ紹介を載せたい。

 クロイシモチは、スズキ目テンジクダイ科テンジクダイ属に分類されている魚で、あまり釣りであがる魚ではないハズだ。知人のサイトをのぞいてみたが、現時点ではまだリストにあがっていない。

 ダイビングにおいては、冒頭のように物陰の暗めになっているところで見かける。同じポイントで見られる他のテンジクダイ科の魚に比べて、特に目が大きめで白っぽく見えたり、どちらかというと深海魚の仲間のように見えなくも無い。

 また、当サイトでも、少ないがクロイシモチの写真も登録しているので、興味のある方はを押して頂くと、別ウィンドウ(お使いのブラウザによってはタブ)でリスト表示されるようにしておいた。


 上の画像を見て、「クロイシモチなのに、何で黄色いの?」と思った方もいるはずだ・・・実はまだよく分かっていない。今回はあえて黄色くなっている画像を選んで載せた。通常は黒っぽい体色をよく見かけるが、早川でも時々、体色を変えている個体を見かける

 体色はかなり短時間で変わることが最近の観察から分かっている。

 著者も「お、黄色いぞ」と思い、カメラで撮影した後にファインダーから目を離したら、黒くなっていた経験がある。また、求愛行動で体色が白っぽく変わっていくのも観察できた。


2003年6月中旬あたりから左側の外周ロープの脇に設置された竹の漁礁に大量にクロイシモチが集まるようになった。漁礁といっても、竹を1本まるごと沈めてあるだけである。

 元はこの竹も、早川に飛来するアオリイカの産卵床になればとサービス側で設置した ものの、アオリイカは一向に産卵せず、代わりにクロイシモチの求愛サイトみたいに なってしまった。

 ペアとなったオスとメスは、他のオスたちと少し離れた位置に陣取って求愛することになる。周囲には他のクロイシモチ以外にもヒメジやキュウセンがウロウロしており、オスはときどき求愛を中断して接近してきたヒメジ等を激しく追い散らした。


 あまりきれいな映像ではないが、文字よりも遥かに分かりやすいので動画(mpeg-1/約4.05M)を用意した。2003年9月12日撮影。

 オスが灰色っぽくてマダラ模様の方、メスが全体的に白っぽいような灰色の方である。映像では見え辛いが、オスもメスも体色が少しずつ白っぽくなっていくところが観察できた。途中でオスが他の魚を 追い散らすためにメスから離れた事により、また色が戻ってしまった。それでも、お互いに離れると、どちらかともなく寄ってきて、オスのブルブル行動が再開した。



 残念ながら2003年の観察では産卵の瞬間を逃してしまった。上記の求愛行動の後〜夕方か夜になる辺りに産卵した可能性があるそうだ。2004年にチャンスがあればリベンジしたい。



 本当は求愛行動のすぐ翌日か、連続しての撮影をしたかったが、2週間以上経ってしまってからの観察になってしまった。

 口にくわえている卵は既に、稚魚の目が見えている。2003年10月1日撮影
(mpeg-1/約4.33MByte)



 残念ながらこれも2003年の観察ではチャンスを逃してしまった。上記の口内保育から数日でハッチアウトが確認できたのではないかと推測している。2004年にチャンスがあればリベンジしたい。